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万葉神事語辞典


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項目名 あまくもの
表記 天雲の
Title
Amakumono
テキスト内容 万葉集に「阿痾久毛」(5-800)の仮名書きのあることから「アマクモ」と清音に読まれ、多くはその形態を元にした枕詞として用いられる。①天雲が固定せずに揺れ動き、留まり難い様子を示すことから「たゆたひ」、「ゆくらゆくら」を導く「天雲のたゆたひ来れば九月(ながつき)の黄葉(もみち)の山もうつろひにけり」(15-3716)、「天雲の ゆくらゆくらに 葦垣の 思ひ乱れて」(13-3272)。②天雲が深く立ち込めて、その奥がどのようになっているか不明であることから、「おくかもしらず」を導く(「思(おも)ひ出(い)でてすべなき時は天雲(あまくも)の奥かも知らず恋(こ)ひつつそ居(を)る」12-3030)。③天雲が人間の手の届かない遠い所にあることから「外(ヨソ)」を導く(「天雲の外(よそ)に雁が音(ね)聞きしよりはだれ霜(しも)降り寒しこの夜(よ)は」10-2132)。また「天雲」によって、示す場所自体が遠い所であることを表現する(「天雲のそくへの極み」3-420、「天雲の向伏(むかふ)す国の」3-443)。④形態として「天雲」が遠い所にあるだけではなく、人間関係において相手との精神的な距離が遠く隔たっていることを示す抽象的な事象を示す(「かくのみし相(あひ)思はざらば天雲の外(よそ)にそ君はあるべくありける」13-3259)。さらに「大君(おほきみ)は神にしませば天雲(あまくも)の雷の上(うへ)に蘆(いほり)せるかも」(3-235)に見られるように、天象物である雷を導くことによって天の神威の発現をこめた呪術性、神話性を有する表現の一部となる。吉井巖「雷岳の歌」『万葉集を学ぶ』3(有斐閣選書)。同「古事記における神話の統合とその理念―別天神系譜より神生み神話への検討―」『天皇の系譜と神話』(塙書房)。伊藤剣「饒速日命の服属―「天」独占化の手法―」『古事記年報』49。
執筆者 阿部りか