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万葉神事語辞典


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項目名 あずま
項目名(旧かな) あづま
表記 吾妻
Title
Azuma
テキスト内容 都の置かれた奈良盆地から見た東方の諸国の総称。その原義は不明だが、アヅマとヒガシは同義ではなく、アヅマのアは接頭語、ツマは辺境の地を意味し、それはサツマと対になる概念であったとする説もある。その用例は三つに大別することができる。第一に、碓氷峠・足柄峠より東の国々を言う場合。紀の景行天皇40年是歳条に、日本武尊に東征を命じた話の中で、尊は東国を平定した後、「時に、日本武尊、毎に弟橘姫を顧ひたまふ情有り。故、碓日嶺に登りまして、東南を望みて三歎かして曰はく、『吾嬬はや』とのたまふ。…(中略)…故、因りて山の東の諸国を号けて吾嬬国と曰ふ」と伝えられる。また常陸国風土記にも、「古は、相模の国足柄の岳坂より以東の諸の県は、惣べて我姫(あづま)の国と称ひき」と見える。第二は、東海道の遠江と東山道の信濃より東の国々を指すもの。それは万葉集の東歌である。第三に、東海道の伊賀以東、東山道の美濃以東の国々を指す例。紀の672(天武元)年6月条に、壬申の乱に際して、天武が「東国に入りたまふ」とされている。「鶏が鳴く 東の国に 御軍を 召し賜へば」(2-199)と、壬申の乱における高市皇子の活躍を伝える柿本人麻呂の挽歌も同様の例である。万葉集のアヅマの用例は、「鶏が鳴く」と冠されるものが多い。その語義については、(1)東国の言葉は都人に理解し難く、鶏が鳴いているようだからとする説、(2)鶏が鳴くぞ、起きよ吾が夫(つま)の意で、吾夫(あづま)になったとする説、(3)鶏が鳴くと東から日が昇るからだという説などがある。(2)が有力だが、アヅマという語と同様、それは多義的なものではないか。また、意味の重層性こそ、口誦の世界で育まれたこうした表現の特長であろう。時と場合により、それぞれの意味で用いられ、聴き手によってさまざまに理解されたのだと考えた方がよい。西郷信綱「アヅマとは何か」『古代の声』(朝日新聞社)。
執筆者 梶川信行