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万葉神事語辞典


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項目名 あすはのかみ
表記 阿須波の神
Title
Asuhanokami / Asuwanokami
テキスト内容 名義未詳とされるが、屋敷神と考えられている。祈年祭及び月次祭の祝詞に見え、「座摩(いかすり)」の巫女の言葉に登場する神である。井戸の三神と婆比支(はひき)の神と併記され、ハヒキとの関連は記の大年神の系譜からも確認される。この系譜には庭津日の神や庭高津日の神といった庭の神の名も見え、関連が想起される。祝詞では神々の御名を唱え終えると続けて「下つ磐ねに宮柱太知り立て、高天の原に千木高知りて」と宮造営に関して大国主神の神話にも見られる表現を用いて天皇の宮殿を祝している。大国主神の神話では地上世界の統治者の宮殿の造営に関して登場している。その宮殿にいて天皇は「四方の国を安国」として統治していると祝詞は語るのである。座摩は居処領(いかしり)で「す」と「し」の母音交換であると言われている。居処を領有する意でありその巫女が唱える御名にあることから敷地を支配する神としての性格を確認できよう。また同様に母音交換の視点からアスハはアシハであり、足磐のこととする説もある。足下にある岩のことで、「下つ磐ね」のことであると思われる。柱を固定する岩のことで、建物の土台の要である柱を強固にするものでありその神格化であると考えられよう。統治の根幹としての視点を宮殿に据え、それを司る神々を祝う。その神としての性格が祝詞の阿須波の神に認められる。『延喜式』神名帳から36座、『貞観儀式』及び大嘗祭式の八柱神にそれぞれ見られる。特に神名帳に見られる足羽神社は著名である。万葉集では防人の歌に「庭中の 阿須波の神に」(20-4350)とあり、庭に祭られた神であることが理解される。この神に小柴をさして身を清め、無事に家に帰還することを祈るという防人の歌である。家人が無事に帰ることは、本人はもとより家族全員の願いである。それは家の秩序の保持に他ならないであろう。であるからこそ、その家の根幹をなすこの神に祈りを捧げるのであろう。
執筆者 落合孝彰