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万葉神事語辞典


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項目名 あきつかみ
表記 現つ神
Title
Akitsukami
テキスト内容 「久邇の新京を讃むる歌」(6-1050)に「明津神(あきつかみ)我が大君」と見える。「あきつかみ」は万葉集に1例、紀に「明神(あきつかみ)御宇日本天皇」(孝徳紀に3例)、『続日本紀』に「明神(あきつかみ)」(5例)・「現神(あきつかみ)」(13例)、詔書令に「明神」。他に「現御神(あきつかみ)」(3例。『続日本紀』)がある。「現神」とあるように「あきつ」(現実に)この世に存在する神としての天皇を指す。使用時期は孝徳朝以降と比較的新しく、律令国家形成時期にあたる。紀・『続日本紀』では「知らす(大八島)」が下接され、統治することを強く意識して使用される。万葉集では臣下(田辺福麻呂)が使用するが、紀・『続日本紀』では多く勅語で使用される。歴史書における使用例は時期と使用者に限定性が認められる。中央神話において神は天つ神と国つ神に分類される。天皇家は天つ神の系統なので、本来ならば天上世界(高天原)にいなければならない。記の中巻では天皇は神的に描かれるが、下巻になると人間的な天皇になる。しかし、大和朝廷は律令国家確立に向けて、絶対的な権力を持ったカリスマ性を有する天皇像を造り出す必要があった。そこで律令国家を目指し始めた孝徳朝(大化の改新)と、大宝律令制定前後頃に『続日本紀』では「明神」「現神」が多く使用されることになる。また使用者の多くが天皇自身であることは、自らを神として演出しようとする政治的目的があったようだ。大極殿に出御して、臣下の前に姿を現し、「あきつかみ」と勅することによって、天皇の霊的な権威を示し、臣下が従順に服することを視覚的に体現しようとしたのであろう。律令儀礼を背景に成立した語といえる。万葉では神としての天皇を描く歌(1-32人麻呂等)は臣下の言葉となっているが、使用者は宮廷歌人が多い。それは、彼らが新しい天皇像を喧伝することを要請されていたことによろう。谷川健一「南島呪謡論17“現つ神”ノロと、“託女”クデ」『現代詩手帖』32-4。西郷信綱『古事記の世界』岩波新書。
執筆者 飯泉健司